フィリピンライフブログ

フィリピンは働く母親に優しい国ー日本はフィリピンに学ぶべき

フィリピンは働く母親に優しい国ー日本はフィリピンに学ぶべき

フィリピンは働く母親に優しい国ー日本はフィリピンに学ぶべき

このコラムでは、フィリピンで妊娠・出産を体験したことで感じた、女性の働きやすい職場環境について書きたいと思います。

この記事のポイント
1. フィリピンの産休は2ヶ月。(会社によっては2か月以上の場合もある)
2. 日本の社会保険制度の方が、SSS(フィリピンの社会保険制度)より、給付金などの面で充実している。
3. フィリピンは世界の各国の男女間の不均衡を示す指標、ジェンダーギャップ指数が、世界10位(2017年)

 




フィリピンで初めての出産を体験

遠距離恋愛だった彼と一緒に住むためフィリピンに移住し、2年が過ぎようとしていた2017年12月、妊娠が分かりました。それは、BPO(※1)の会社を退職し、金融関係の会社へ転職が決まったすぐのことでした。

(※1)BPO: Business Process Outsourcingの略。自社の業務プロセスを外部企業の委託すること。

妊娠が分かってから出産まで、日本には一度も帰国しませんでした。理由は、フィリピンの産休が2か月しかなく、日本に帰国して出産するには十分な時間がなかったから。しかし、フィリピンで出産したことでスムーズに仕事に復帰できました。フィリピンで出産してよかったと今は思います。

2018年8月、無事に出産を終え、子供はすくすく育っています。仕事と育児の両立はハードではありますが、とても充実した毎日を過ごしています。上司と同僚たちの理解があったからこそできたことなので、彼らにはとても感謝しています。

フィリピンの産休制度は日本に比べるとまだまだ

日本は産前産後休暇が14週間、育児休暇は子が1歳になるまで取得できますよね。さらに正当な理由があれば延長も可能です。一方フィリピンでは、出産日の前後で2か月間の産休が取得できます。いつからいつまで取得するかは本人が決めます。フィリピンの方が、かなり短くなっていますね。

社会保険を比べてみましょう。日本では、健康保険から出産手当一時金42万円が支給されます。さらに、報酬が受け取れない分、生活を保障するために主産手当金も支給されます。一方フィリピンでは、SSS(フィリピンの社会保険制度)から手当が支給されます。受け取る金額は、今まで支払った保険料の額によって変わります。わたしの場合は3万ペソ(約6万6千円)を受け取ることができました。

日本とフィリピンを比較すると、フィリピンの育休制度や社会保険制度は、日本と比べてだいぶ遅れています。わたしは妊娠3か月でこの事実を知り、フィリピンに移住したことを後悔しました。

特に産休がたった2か月だと知ったときはショックでした。2か月の赤ちゃんを残して会社に行かなければいけないなんて、母親失格のような気持になりました。わたしが家にいない間、だれが赤ちゃんの面倒を見てくれるのか。旦那は働いているし、わたしと旦那の家族はフィリピンに住んでいません。このような環境の中で、本当に子育てができるのか。全く自信がありませんでした。

職場復帰、上司の言葉が励みに

悩んだ挙句、上司に相談しました。「出産2か月で、フルタイムで働く自信が全くない。少なくともあと3か月多く休みたい。休職という形はとれないか。無理なら退職も考えている」

こう相談すると、わたしの上司は「辞めてどうするの。専業主婦になるの? 休職したとしても、そのあとはどうするの? これからのキャリアを考えると、それはサキにとって良くないんじゃないか」

そう言って、どうしたら育児と仕事を両立できるか一緒に考えてくれました。上司と話し合った結果、決まったことは下記3つ。

 

①会社の制度であるBack to Work Schemeを利用し、週3日勤務にする。3日のうち、1日は自宅から仕事をする

Back to Work Schemeとは、職場復帰して2か月の間、勤務時間を減らすことができる制度です。勤務時間は50%、60%、80%など、自分で決めることができます。日本の時短勤務のような制度ですね。

わたしの場合は60%にして、週3日勤務させてもらえることになりました。上司の配慮で、週1日は自宅で働くことも許可してもらえました。

 

②育休とBack to Work Schemeで仕事に出ない間、誰かが仕事をカバーできるようにする

産休からBack to Work Schemeが終わるまで4ヶ月。その間、誰かがわたしの仕事をカバーしなくてはいけません。そのために、いまから他の社員をトレーニングしていくことにしました。

「わたしのせいで、他の社員に負担がかかる・・・」と心配しましたが、嫌な顔をしたり、文句を言う同僚は一人もいませんでした。それより、生まれてくる赤ちゃんに合うのが楽しみだといって家族のように喜んでくれたのが本当に嬉しかったです。

上司に「わたしのせいで負担をかけてごめんなさい」と謝ったときは、「そんなこと言うべきじゃないよ。ごめんなさいなんて思わないで。」と言ってくれました。わたしの上司は2人の子供を持つ父で、facebookでは家族の幸せそうな写真を頻繁に投稿しています。フィリピンでは、子育てには積極的に関わる父親が多く(というか、それが当たり前)、子育てを経験している分、わたしの気持ちもよく理解してくれたのでしょう。

 

③ベビーシッター(タガログ語で「ヤヤ」と呼ぶ)を雇う

フィリピンでは、0歳から預けられる保育園のような施設はありません。その代わりに「ヤヤ」と呼ばれるベビーシッターを雇うのが一般的です。仕事を続るためには、ヤヤさんを雇わないといけないと上司から言われました。問題は、信頼できるヤヤさんを見つけられるかどうかでした。

通常、エージェントや知人の紹介でヤヤさんを見つけますが、信頼できるヤヤさんを見つけるのは、ここ最近では難しくなっています。でも、生まれてくる赤ちゃんのため。エージェントに片っ端から電話をかけ、知り合いにもヤヤさんになってくれる人がいないか連絡しました。上司や同僚たちも、親戚や友人にあたってくれました。

このように、上司と同僚の協力のおかげで、娘と過ごす時間が増え、大きなストレスを感じることなく、新しい環境にスムーズに対応することができました。

 




子育てには会社、同僚、上司の理解がいかに大切かを実感

わたしが東京のコンサルティング会社で働いていたとき、わたしの上司(男性)がこう言いました。

「女性は結婚して子供が生まれたら辞めちゃうんだよね。採用しても。」

当時のわたしは、大学を卒業し入社して間もない頃。「自分もそういう時が来るのかな」くらいにしか思いませんでした。しかし、今その言葉を思い出すと「なんて心無い言葉なんだろう」と思ってしまいます。

フィリピンでは、こんなことを言う上司はまずいないでしょう。

女性が出産をして、仕事に復帰するかしないかは、会社、上司、同僚の理解が大きな理由になります。もちろん、家庭の事情、体調、子供の状況、保育園に入れるかなど、さまざまな原因によって左右されます。しかし、復帰したいのにできない、という女性も多くいるはずです。

有休を取りやすいのも育児をする上で重要です。わたしの会社では、休みの間、誰かがカバーでき日々のタスクに支障がなければ、1週間以上であっても有休が取れます。もし業務のボリュームがありすぎて、有休が取りにくいと上司が判断すれば、他のチームの誰かをトレーニングしカバーしあえるように調整します。

日本で働いていた時に感じたのは、有休を申請するときに受ける周りの視線です。有休取りすぎじゃない? という無言の圧力を感じながら、上司に申請書を提出していました。

こんなこともありました。クリスマスの時期に1週間の有休を申請しようとしたら、上司が申請書をわたしに投げつけ「まだ半人前なのに長期の休みを取るなんて考えられない」と言い放ちました。じゃあいつになったら許可してもらえるのか? まだ半人前でも有休をとる権利はあるはず。こんな会社で、子供のために十分なお休みが取れるのでしょうか。

日本も、フィリピンのように働く女性への理解が必要

先に、Back to Work Scheme制度の話をしました。このように会社が働くママのために様々な制度を用意することも重要です。

わたしの会社には、育児中の女性が搾乳できるよう搾乳室(Lactation Room)があり、多くの女性社員が利用しています。出産後数カ月は、搾乳をしないと乳腺炎になることがあるので、数時間おきに搾乳をしなければいけません。

搾乳室には母乳を保存できるように冷蔵庫もあります。多くの社員が母乳を会社で絞り、退社まで冷蔵庫で保存し、自宅に持ち帰っているのです。そうすれば、赤ちゃんを世話する家族やヤヤさんが解凍して与えることができます。

フィリピンはジェンダーギャップ指数10位、日本は114位

世界の各国の男女間の不均衡を示す指標、ジェンダーギャップ指数というものがあります。2017年のデータによると、フィリピンは多くの先進国をしのいで10位。日本は先進国にもかかわらず114位です。

この根底にあるのは、またまだ働く女性に対して会社や他の社員の理解が進まないからではないでしょうか。家庭より会社を優先すべきだという「常識」を、おかしいと気付くべきです。

会社の中に限らず、家庭でも旦那さんの理解が必要です。「日本は育児に関わる男性が増えてきた」とたまに耳にしますが、男性が育児にかかわるからすごいのではなく、それが当たり前になるべきです。

皆さんはこの日本とフィリピンの違い、どう感じるでしょうか。少なくともわたしは、いくら社会保険制度が充実していなかったとしても、今の生活に100%満足しています。会社の仲間たちから多くのことを学び、人間的にも成長できました。

日本の人々は、働く母親に対する考え方を変えていかなければいけないと強く思います。




出典
The Global Gender Gap Report 2017

4 thoughts on “フィリピンは働く母親に優しい国ー日本はフィリピンに学ぶべき

  1. NORI

    こんにちは。とても充実してそうで、羨ましいくらいです。職場の上司や同僚さんも良い人が多そうです。
    サキさんはフィリピンでは外国人ですが、母国の人であってもサキさんが勤められている企業であれば同じような待遇が得られるのでしょうか。きっと大丈夫なのでしょうね。
    一般的な日本人にとっては眉を顰められるかもしれませんが、私の知り合いの多くは企業に勤めることができない人〜おそらく学校も出れなかった人が多いため、サキさんの職場のような話が聞けません。ナイトクラブに勤めている人も含め、9割がシングルマザーです。男性の知り合いも少なくないですが、学歴や縁故がないために定職につけず、多くはアルバイトのようなことをしています。
    サキさんが書かれているように本当におおらかで、家族や友人を大切にする彼ら彼女らです。カトリック?彼らの宗教への信望がそうさせているのかもしれません。
    借りたお金は返さ(せ)ない、余分に持っていたら貧しいにも関わらず周囲の人に振る舞って楽しむ、手元にお金が無いのも神の思し召しと考える。良くも悪くも、です(苦笑)
    私はNPO法人でもお金持ちでもないですが、そんな明るい知人たちに、少しでも助けになりたいと思って行動しています。サキさんのような企業には絶対勤めることはできないと思いますが、才能あふれる彼らをどうにかしてあげたい。正直、私が日本で得られる僅かなサラリーを分けたり、彼らの支援になるような物品を送ったり届けたり、あれこれ試しもしました。しかし、全ては神のおかげと受け止められ、翌日から彼らが変わるスイッチにはなりません。
    マニラに住むサキさんなら、働く意欲があるフィリピン人、才能があるフィリピン人、何かを変えたいと思っているフィリピン人に、どんな提言をしてあげるべきか、何かヒントをお持ちでないかなと思い、だらだら書きました。すみません。
    でも本当に、港に溢れるパワフルなシングルマザー、仕事がなくて離婚や別居を余儀なくするシングルファザーに何か手助けできればと、アイデアを探す毎日ですので、ほんの一言でも提言いただければ幸いです。長文、すみませんでした。。

    1. kajiuras Post author

      NORIさん、コメントありがとうございます。こんなに真剣にコラムについて感想を書いてくださって、本当に嬉しく思います。わたしの会社は、外資系銀行のシェアードサービスですので、日本人スピーカーの採用を行っていますが、なかなかマニラに住む日本人を採用することができないようです。マネージャーが親身になってくれるのは、もしかしたらこれが理由かもしれません。
      しかし、フィリピン人の多くはすごく家庭を大事にしていて、家族のためにお仕事を休みことは当たり前という感じです。NORIさんがおっしゃっているように、周囲の人にふるまうのが大好きなんでしょうね。とくに誕生日。全員の誕生日を職場で盛大に祝います。ただ、わたしのように夫と子供だけで暮らすのは珍しいのかな、と思います。おおくのシングルマザーは両親と同居していて、仕事に出ている間は両親が子供の面倒を見ているという家庭が多いように思います。

      NORIさんはNGO法人にいらっしゃるのですね。わたしは学生時代にフィリピン大学に留学したことがありますが、そこにいる学生の中には本当に貧しく、大学の寮に住み1日バナナ1本で生活していた友人がいます。授業で使う教科書をコピーをするお金がないときは、食費を削ってコピーをしていたそうです。でもその友人は明るく前向きで、あきらめず大学を卒業し現在はマニラの大手企業に勤めています。お給料が普通にもらえるようになり、すこし(というか、かなり。。。)太ってしまっていますが(笑)彼女を見て、あきらめなければ貧しくてもなりたい人になれるんだと思いました。

  2. NORI

    サキさん、返信いただけていたのを長らく気づかず(苦笑)
    すみませんっ&ありがとうございました!
    引き続きダラダラ相談もご迷惑なので割愛しますが、
    本当に「よくその状況で明るく前向きでいられるね?」と驚かされることの方が多いです。
    当初こそ呆れることの方が多かったですが、今では逆に元気付けてもらうことばかり。
    諦めずに笑顔で頑張れば夢は叶う。サキさんの友人の方も含め、
    希望を捨てないならいつか幸せになれるはずですね。
    引き続き、愛読しております。頑張ってください!(私も頑張ります)

    1. さきめろ Post author

      NORIさん、こちらこそご返信ありがとうございます。フィリピンに住んでいると、正直嫌になることもたくさんありますが、NORIさんのコメントで元気が出ました。本当にありがとうございます。

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